若年性認知症カフェ
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若年性認知症カフェ
2025年11月15日(土) 13時~16時
【会場】 新オレンジサポート室
【テーマ】「道迷い」「行方不明時の捜索」についての経験共有
【参加者】12名(当事者 0 人、家族 7 人、支援者 4 人、行政 1 名)
交流会(近況報告)
開催の目的
今回の家族会は、認知症のあるご本人の「道迷い(徘徊)」や「行方不明時の対応」という、非常に重要でありながら語りづらいテーマに焦点をあてた。道迷いは決して珍しい現象ではなく、認知症の進行段階や生活環境によって誰にでも起こり得る。しかし、家族にとっては突然の不在、事故の危険、夜間の外出など、精神的にも身体的にも大きな負担となる。本会では、経験を共有し合うことで安心を得るとともに、行政の支援制度や地域資源を正しく活用し、命を守るための備えを考えることを目的とした。
参加者の自己紹介と介護背景
参加者はうるま市・那覇市・豊見城市・南城市など、県内各地から集まった。介護歴 10 年以上のご家族、若年性認知症の夫を支える方、子育てや仕事との両立に苦慮する方など、多様な背景があった。ある方は「夫が診断を受けてから 13 年、同じ道を歩んできた家族の話に勇気をもらえる」と語り、別の参加者は「発症から間もなく対応に迷いが多い」と不安を述べた。多様な経験が集まったことで、初めて参加した方も安心して語り始める場となった。
道迷い・行方不明の実際と家族の心情
参加者の語りから、「道迷い」は単なる迷子ではなく、認知症がもたらす“生活のズレ”の表れであるということだった。
(1)本人には「いつもの散歩」のつもり
ある家族は、テレビのリモコンを持ったまま外出し、思いがけず遠くの海辺まで歩いていた夫を保護された経験を語った。本人は“散歩”のつもりであり、危険を理解していない。家族は帰りを待ちながら時間が経つにつれ強い不安を感じたという。別の家族も、普段は決まったルートを歩く夫が、周囲の工事で景色が変わった途端、方向感覚を失って帰れなくなったと話した。
(2)夜間の外出という大きな負担
新規の参加者からは、夜に突然「挨拶回りに行く」「犬に 餌をやる」と理由を言 って外へ出ようとするという様子が 聞かれた。家族は寝不足になり、気が抜けない日々が続く。参加者からは、「寝間着のまま外に出ようとする」「夜中の 3 時に玄関のセンサーが反応する」「何度止めても理由をつけて出ようとする」など、切実な声が寄せられた。
(3)突然始まる道迷い
普段は外出しない夫が、ある日突然門を“よじ登って”出ていった例が紹介された。
家族はまったく予期しておらず、すぐに捜索に向かったが夜間で視界も悪く困難を極めたという。
翌日、無事に畑の中で保護されたが、もし天候が悪ければ命に関わった可能性が高い。また、遠方で保護された際、タクシーを利用したと思われる例もあった。
(4)地域の支援や偶然に助けられる場面
食堂の店主や近所の方から「見かけた」と連絡や、建設現場で働く息子が偶然本人を見かけて保護に至ったケースあり、地域のつながりや目に留めてくれる人がいることの大切さが改めて共有された。
家族が抱える“迷い”と“ためらい”
多くの家族が強調したのは、「警察に通報するタイミングが分からない」 という葛藤である。
「10 分見えない だけで通報してよいのか」「もしかしたらすぐ帰ってくるかもしれない」
「大げさだと思われないだろうか」と悩み、通報を遅らせてしまう家族が多い。しかし、この“ためらい”が命の危険につながることも事実であり、今回の会では、この点に関して丁寧な説明が行われた。
行政職員からの説明:制度の現状と課題
宜野湾市の担当保健師とうるま市の認知症地域支援推進員から「おかえり支援ネットワーク(宜野湾)」うるま市「 SOS ネットワーク」 の仕組みと課題について詳しい説明があった。
(1)制度の改善点
書類が多く負担が大きいため、行政側で簡素化に取り組んでいる
情報提供を受けても、夜間・休日は役所が動けず実質的には警察のみが対応
企業へのメール連絡は見落とされやすく、電話での確認が必要で時間がかかる
(2)利用する際の重要ポイント
行政職員は明確に「10 〜 15 分姿が見えないだけでも、遠慮なく警察に通報してほしい」
警察は決して家族を責めない。むしろ早期対応が命を守る。
特に夜間は視界が悪く、工事現場・水路・農地などの危険が増すうえ、道迷いの多くは自宅から1.5km 以内に集中するため、早い段階での通報が有 効である。
実際、「早めに通報して助かった」具体的な事例も複数紹介された。
家族が導入している見守り機器と工夫
- 参加者間で、実際に役立った工夫や機器が多く共有された。
技術の活用:ドア開閉センサー(スマホ通知)、防犯カメラ(玄関・階段・庭)AirTag 等位置情報
タグ、ペット用の布製タグ(皮膚が弱い人の対策)夜間用の反射材つき衣服遠方の子どもへ連絡が届く設定 - 日常的な工夫:毎日、着衣の写真を撮り役場へ提出できるよう管理、外出の“癖”を把握し、歩く方向・目的地を家族が追跡、本人の行動パターンや時間帯の傾向を記録
どれも万能ではないが、複数の手段を組み合わせることで、家族の安心感と安全確保に一定の効果
を生んでいる。
地域社会の役割と、求められる支援の方向性
会では「道迷いは家族だけが抱える問題ではない」という意見が多く共有された。
- 地域の協力は命を守る力になる:実際に、自治会での捜索、事業所スタッフの協力、通りすがりの住民の声かけなどが本人の無事につながっ た事例が多数あった。
- 制度の統一と情報共有の仕組みが必要:市町村によって制度名・仕組み・連絡先が異なるため、「沖縄県で統一した仕組みが必要」という意見が強く出された。
- 市のLINE を活用した個人向け通知の実現へ:「匿名で“道迷いが発生した地域”だけでも知らせてほしい」「地域の人が自発的に見守りに参加できる仕組みがほしい」といった提案もあり、行政側も前向きに検討していることが示された。
まとめ
今回の家族会では、道迷いの具体的な困難、家族が抱える疲れと不安、行政の課題、そして地域の支えの重要性 が、丁寧に共有された。道迷いは“家族の責任”ではなく、認知症に伴う自然な症状のひとつである。重要なのは、「迷ったときに、周囲がどう支えるか」という視点である。家族会はこれからも、家族が孤立せず、安心して語り合える場所として継続していくことが望まれる。
