若年性認知症カフェ

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若年性認知症カフェ

2026年2月21日(土) 12時~16時
【会場】 新オレンジサポート室
【参加者】17名(当事者1人、家族11人、支援者4人 講師1人)

 

交流会(近況報告)

概要

参加者からの希望を受けてマネーセミナーを実施した。講師からは、一般的な「将来に向けたお金の守り方・増やし方」と、「認知症・介護に伴うお金の問題や相続」の二つのテーマが提示され、参加者の希望により、今回は「介護と認知症とお金の話」を中心に学ぶこととなった。冒頭では、参加者から「認知症介護のお金のこと、という言葉では内容がわかりにくい」との声もあったが、「資産凍結などの話」と説明されると、「それが聞きたい」と関心が高まり、会場全体が一気に引き込まれていった。

 

講師

講師の宮城氏は福祉・介護分野で長年相談業務に携わってきた経験を持ち、現在は保険・資産形成分野も含めて相談支援を行っている。本人からは、「福祉の現場では、お金の相談に十分対応できないことが多い。これまでの福祉の経験にお金の知識を掛け合わせることで、もっと役に立てるのではないかと思った」と語られ、福祉現場に寄り添う姿勢が印象的であった。

 

講義内容

(1)介護は突然始まり、費用は長期化する
講師は、78歳の男性Aさんと75歳の妻の架空事例を用いながら説明を行った。Aさん夫婦は年金収入が月23万円ほど、預貯金が1,200万円あり、自宅も所有しているが、特別な対策はしていないという設定である。こうした家庭は「すごくお金持ちではないが、全くないわけでもない、よくある家庭像」として示された。
介護期間については、平均で約5年程度と説明された。さらに、介護にかかる費用は一時的な支出だけでなく、月々のサービス利用料が長く続くため、総額では約500万~550万円程度の準備が必要との話があった。住宅改修や介護用品の購入などの初期費用に加え、在宅介護から施設利用に至るまでのランニングコストを含めると、それだけの金額になるという。
Aさん夫婦のケースでは、生活費に月20万円かかるとすると、残るのは3万円である。一方、介護費用は月8万~9万円ほど見込まれるため、月5万円前後の不足が生じ、5年で約300万円の不足となる計算が示された。講師は「こういう計算をする機会は意外と少ないが、準備を考えるうえで大切」と繰り返し強調していた。

(2)介護が必要になる原因として認知症は大きい
介護認定を受ける原因として認知症が最も多いことが示され、脳血管疾患や高齢による衰弱・転倒骨折も多いが、認知症はとくに重要なテーマであるとされた。また、沖縄では脳血管疾患や糖尿病が多い印象があることにも触れられ、「かなり状態が悪くなってから病院を受診する人が多いのではないか」といった話もあり、参加者も深くうなずく場面が見られた。

(3)認知症と資産凍結
講義の中心となったのは、認知症が進んだ際に起こりうる資産凍結の問題であった。Aさんの物忘れが増え、家族が「定期預金を解約して今後の介護費用に充てよう」と銀行に相談したところ、「本人の意思確認ができないと解約できない」と言われる、という例が示された。ここでは、認知症によって契約や解約などの法律行為が難しくなり、結果として預貯金や投資信託、不動産まで「あるのに使えない」状態になることが説明された。また、年金も口座に振り込まれるため、口座が実質的に動かせない状況であれば、その年金すら簡単には使えなくなるという説明があり、参加者は大きな衝撃を受けていた。講師は、「介護費用は毎月かかり続けるのに、本人のお金があっても使えない。すると子ども世代が、親の介護費用と自分の子どもの教育費の両方を抱える“ダブルケア”の状態になる」と話し、早めの備えの重要性を訴えた。

(4)対策として紹介された制度
資産凍結への対策として、講師からは次の制度や方法が紹介された。
まず、成年後見制度については、認知症発症後に使う代表的な制度であり、家庭裁判所への申し立てが必要で、選任まで数か月を要すること、成年後見人は家族が希望しても必ずしも家族になるわけではないこと、さらに報酬が継続的に発生し、一度開始すると原則として外せないことが説明された。講師は、「必要な人には大切な制度だが、できれば他の対策で備えられるならその方がよい」と述べた。
次に、任意後見制度については、元気なうちに将来を見越して契約しておく「予約型」の制度として紹介された。誰に、どのようなことを任せるかをあらかじめ決めておける点が特徴である。
さらに、家族信託については、元気なうちに信頼できる家族に財産管理を託す方法として説明された。 不動産の売却や金融資産の運用など、成年後見よりも柔軟に対応できる一方で、「絶対に信頼できる家族がいること」「家族間に大きな対立がないこと」が前提になると話された。講師は、「仲の良い家族でこそ成り立つ仕組み」と述べ、制度の自由度と同時に難しさも伝えていた。
最後に、生命保険の活用についても触れられた。受取人をあらかじめ決めておくことで、相続財産と切り離して比較的早く現金化できること、また介護や認知症に備える保険では非課税で受け取れるものもあり、介護保険の自己負担割合に影響しにくい受け取り方ができる場合があることが紹介された。講師は、「どれか一つが正解ではなく、組み合わせて考えることが大切」と話していた。

 

質疑応答・参加者の反応

質疑応答では、参加者から率直で実践的な質問が相次ぎ、講義が一方通行ではなく、参加者自身の暮らしと重ねながら進んでいたことがうかがえた。
成年後見制度についての説明の際には、参加者から「この制度を知らない人は、全部やってくれると思ってしまう」との発言があり、制度のイメージと実際とのギャップに驚く声があった。これに対し講師は、「全部任せられる制度ではない。よく知っていて、ほかの選択肢もわかる人に相談しないといけない」と応じていた。
また、後見人への報酬について、「本人の資産が尽きたらどうなるのか」という質問も出された。講師は、裁判所がその人の資産状況などを見ながら判断し、仮に資産が尽きた場合でも成年後見人が生活保護申請などを行うため、生活が立ち行かなくなるわけではないと説明した。参加者からは「怖いですね」との反応もあり、制度への複雑な思いが表れていた。
さらに、成年後見人ができること・できないことについても質問が出た。講師は、入院手続きなどはできるが、医療行為への同意は成年後見人の役割ではないことを説明し、「全部任せられるわけではない」と改めて述べた。これを受け、参加者からは納得と戸惑いが入り混じったような反応が見られた。
認知症と契約能力の関係についても質問があった。参加者からは、「診断を受けた時点でもう意思決定できない扱いになるのか」との問いが出され、講師は、「診断がそのまま一律にイコールではない。本人と面談して、まだ理解が十分あると判断されれば、その時点でできることもある」と答えていた。つまり、診断名だけで一律に決まるのではなく、実際の判断能力が重要であるという説明であった。
また、成年後見制度には「成年後見・補佐・補助」の三段階があることも紹介され、参加者からの「どの段階が大事になるのか」という問いに対し、講師は、判断能力の残り方によって適用される段階が異なることを説明した。すべてを代行する最も重い類型が成年後見であり、部分的に本人の意思を残せるのが補佐・補助であるとの整理であった。
銀行口座の取り扱いについては、参加者の中から補足もあった。「緊急時でもお金は出せない」との説明に対し、別の参加者から「銀行協会のリーフレットでは、家族確認や資金使途が明確であれば、銀行判断で引き出しに応じる場合もある」との情報提供があった。講師はこれを受け止めつつ、実際には銀行職員の判断や各金融機関の対応に左右される面が大きいことを共有していた。会場ならではの相互補完的な学びが生まれた場面であった。

 

まとめ

今回のマネーセミナーでは、介護や認知症に直面したとき、お金の問題は単に「いくら必要か」という話にとどまらず、そのお金を実際に使える状態にしておけるかが大きなテーマであることが共有された。参加者にとっては、介護費用の目安や、資産凍結、成年後見、任意後見、家族信託、生命保険といった制度や選択肢を具体的に知る機会となった。
特に印象的だったのは、「認知症が始まってからでは、できる対策はかなり限られる」「元気なうちにしかできない準備がある」という講師の繰り返しのメッセージであった。参加者からも質問が相次ぎ、制度への不安や疑問を率直に出しながら学び合う、実りある時間となった。今後も、おれんじカフェがこうした生活に密着したテーマを安心して学び合える場であり続けることの大切さが感じられた。