「正義のみかた」

  • チャプレン室「こころのサプリメント」

「正義のみかた」

チャプレン室 瑞慶山 真

 

人は誰もが自分の中に、正しい行いの元になる義のものさしを持っています。

でも、それは個人の信条や価値観などによっても、違ったりすると思います。

自分の正しさを基準にして立ち、一歩も譲らず意固地でいると、考えの違う人に対して「あなたは間違っている」と、相手の義をひっくり返したくなる。そういう一面を誰もが持っているのではと思います。

 

つまり自分のものさしで、“測れない”、“測りたくない”に陥ってしまうと、手に持っていたものさしを、相手を叩くための道具に変えてしまうのです。

 

同じ両親のもとに生まれ育った、最も身近な兄弟関係にあてはめてみても頷けます。個人レベルでもそうなのですから、これが国と国との関係となると一体どうなるのでしょう。

以前の私が人間関係につまずいたのも、そうした“自分が正しい”思いだけが、あまりにも大きかったからだと思います。

 

聖書は「義人はいない、ひとりもいない」と語ります。

 

残念ながら、人間は自分の基準で正義をふりかざしたとしても、100%の正しさはそこにはないと教えているのです。

神様の聖さ、神様の義(正しさ)の前では、人間のもつ義は遥かに遠く及ばないのです。

 

ところが、そうではあっても神様が愛によって義を完成されるお方であることを知り、私たちがそれに倣いたいと、握りしめていた手を開き、さらには両手を広げられるようになるなら、私たちも正しさに生きる者になるのです。

 

その寛容と親切の心を私たちに教えてくれる方がいます。私たちがそのように生きたいと願うなら、私たちの手が届くように一緒に手伝ってくださるのです。そのお方は、どこまでも人を愛することで、決してひっくり返ることのない正義を行いました。

人の命を生かすためには、自らが傷つくことも恐れず、お腹を空かせた人がいれば食べさせてあげ、困っている人がいれば自分から訪ね、誰に対しても、もっとも近い位置(その人の隣り)にいて助けてくださいました。

 

本当の正義を愛によって完成されたのです。

 

私の好きな作家の一人、やなせたかしさんは、それを体現したヒーロー(アンパンマン)を世に広めましたね。

若い頃に戦争を通して、悲しい、淋しい、ひもじい思いを自ら体験して、心に痛みを抱えながら正義について考えたと言います。

そうして幼い子どもにもわかる、あのヒーローが誕生したんですね。

 

その姿は、“神は私たちとともにおられる(=インマヌエル)”と呼ばれるイエス・キリストの姿とどこか重なります。

正義のみかたがかわった瞬間でした。