災害NGO「結」の前原土武さんの講演会を開催しました
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災害NGO「結」の前原土武さんの講演会を開催しました


「自然災害と共に歩む~地域のつながりで守る命~」
2024年12月10日、当院では災害への備えと連携体制の強化を目的として、災害支援団体「結」代表・前原土武(まえはら・とむ)氏を講師に招き、災害対応に関する講演会を開催しました。前原氏は沖縄県出身で、東日本大震災を契機に災害支援活動を始めて以来、全国各地の被災地で支援活動を続けてきた方です。発災直後から現地入りし、「支援が必要な人」と「支援したい人」を結びつける調整役として、住民・行政・ボランティア・外部団体との架け橋となって活動されています。
今回の講演では、2024年元日に発生した能登半島地震での支援経験を中心に、災害現場のリアルな課題や、高齢化・過疎化といった地域社会の問題が、災害時にどのように浮き彫りになるかについて、写真や具体的な事例を交えてお話しいただきました。
特に印象的だったのは、高齢者が多数を占める地域において、避難所運営や物資配布、安否確認といった基本的な支援活動すら人手が足りず困難を極めたという点です。また、仮設住宅への移行が遅れたり、慢性的な支援疲れや孤立から“関連死”が発生した実例にも触れ、「災害は“自然”そのものではなく、“人の暮らし”と交わった時に起きる社会現象である」との言葉が心に残りました。
前原氏は「災害時に“支援が届かない人”が出るのは、平時から社会の中で“見えにくい存在”だったから」と指摘し、災害を通して社会の弱さや分断が可視化されることを強調されました。講演では、行政や大きな組織の支援だけでは補えない「隙間」を埋める存在として、地域のつながりや、福祉・医療の専門職の関わりが不可欠であることが語られました。
また、「誰かがやってくれる」という他人任せの意識ではなく、「自分たちが担い手になる」という姿勢が災害対応には重要であるというメッセージは、参加者一人ひとりに強く響きました。実際に災害支援の現場では、医療・福祉専門職が果たす役割は非常に大きく、避難所での体調管理、心のケア、生活再建支援など、専門的知見を活かした対応が求められる場面が多いとのことです。
質疑応答では、参加者から「高齢者が多い地域で避難支援をどう進めればよいか」「地域福祉と防災の連携をどう実現するか」といった具体的な質問が寄せられ、前原氏は「“誰も取り残さない避難”の実現には、日常的な顔の見える関係と、普段からの訓練が欠かせない」と述べられました。
当院ではこれまでも地域との連携や避難訓練、防災教育に取り組んできましたが、今回の講演は、それらの取り組みに対して新たな視点をもたらすものでした。「防災は特別なことではなく、日常の延長にある」「“支援”は技術だけでなく、“人のつながり”から始まる」という言葉の重みは、今後の災害対策・地域連携を再考するきっかけとなりました。
今後も当院では、福祉医療の現場からできる防災のかたちを模索し、地域住民の安心・安全につながる取り組みを進めてまいります。
2024/12/10 主催:医療法人アガぺ会リハビリ部
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