「空っぽになるほど疲れた時は・・・」

  • チャプレン室「こころのサプリメント」

「空っぽになるほど疲れた時は・・・」

チャプレン室 金 知明(キム ジミョン)

わたし(キリスト)があなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。
ヨハネによる福音書 13章34節

 

形あるものは、ときに壊れます。形や機能を失いながらも新たな役割を見つけ、発展していけると良いのですが、正常な状態ではないことに気が付かずそのままにしておくと修復不能に至ることもあります。ガソリンが入っていないのに車の給油メーターがいつまでも満タンを指していたり、充電がないのにスマホのバッテリーが100%を示しているのは故障です。何らかの原因で当初の形や機能を失っている状態です。そのことに気が付かず、力を使い果たした空っぽの状態で何事もないかのように使用し続けると、不具合が起こるばかりか修理して本来の状態に戻すことさえ難しくなります。

 

私たちの体や心も同じだと言えるかも知れません。体や心に原動力が満たされていないまま動き続けると、本来の喜びや生きがいを見出せなくなります。空っぽの状態で働くことは不可能です。家族や職場の人間関係、お金の悩み、家庭と仕事の両立など人生の様々な出来事が、今日も私たちのあらゆる力を奪っていきます。幸福感よりもストレスや疲れ、悲しみに満たされてしまうこともあるのです。老若男女、生きている人の日常にはよくあることです。

 

そんなとき、私たちは休んで体力を取り戻し、心に安心と希望、生きる力を取り戻さなければなりません。それは周りの声や責任に応えるためよりも、あなたが今生きていることを楽しむためです。私たちは今与えられているいのちを楽しみ、喜ぶ権利があり、それを求める資格があります。

 

人は愛されてこそ愛することができ、満たされてこそ与えることができます。人生は山あり谷あり、苦しみ悲しみがある分、少なくとも同じくらい安心と喜びに溢れるときが必要なのです。休息と癒しの時を大切にできる人になりたいと思います。1人の人として尊重され、愛されること、それはいのちあるものに与えられる本物の幸せです。だからこそ、私たちの体や心が、本来の力を発揮できるよう、私たちの支えとなる力の源にしっかりと繋がっていたいのです。日常を取り巻く状況や、日頃の成果で変動するものではなく、むしろ毎分毎秒揺れ動く人生の中で、決して揺らぐことのない人生の指針を何度でも確かめていたいのです。それはあなたの人生において荒れ狂う海で道を示す灯台となり、雨風を凌ぐ隠れ処となります。

 

自分や周りの人を愛する力なんて残っていないくらい疲れ果てたそのときこそ、ただ私たちの存在自体を包み込む、神様の愛に浸りきるときかも知れません。私たちの心が本物の愛で満たされてこそ、求める人へ分け与えることができます。あなたが愛されて今生きていると気づくことは、人を愛することと同じくらい大切なことであり、どんな時も心に癒しと喜びを与えてくれる、かけがえのない力となります。