こころのサプリメント「痛い経験から得るもの」
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こころのサプリメント「痛い経験から得るもの」
チャプレン室 長濱 カンナ
わたしはまことのぶどうの木であり、わたしの父は農夫です。わたしの枝で実を結ばないものはみな、父がそれを取り除き、実を結ぶものはみな、もっと多くの実を結ぶために、刈り込をなさいます。(ヨハネ15:1~2)
20年前、韓国に長期滞在していたときのこと。日本人は私を含めて5名。他にも台湾、香港、シンガポール、マレーシアの国からも数名ずつ来韓し、寮のようなところに一緒に住んでいました。
初めは、新しく知ることばかりで楽しく過ごしていましたが、長期の滞在です。文化、言語の違いや慣れない土地で暮らしていると、2~3週間が経った頃から、みんながストレスを感じ始めたのです。
ストレスの感じ方は人それぞれ。一人、また一人と我慢の限界を越える人が次第に増えてきて、いつしか互いが、ぎくしゃくし始めたのです。私は必死でこらえて一日一日、平穏に過ごしたいと、笑顔を絶やさず、励まし、祈って心を整えていました。ある時、つらい気持ちを振り払おうと部屋で讃美歌を口ずさみました。すると同室のKさんが怒りだして「耳障りだから、歌うのやめてくれない。」と言われました。
初めはKさんに怒られたことを理不尽に感じて、「自分の怒りに任せて感情をぶつけて、他者に嫌な思いをさせてはいけないと、私はこんなに頑張っているのに。つらいのは私だって一緒だ。」と思っていました。しかし、苛立っている時に周りで陽気にしている人を見ると、気に障るのは仕方のないことだと、後になって、身に染みて分かったのです。
私は自分の心を守るためだけに必死で、周りの人の気持ちを少しも理解していないと気づいたのです。他者のことを思うがための心遣いだったのですが、今、つらい状況に立っている、その人の心に寄り添えていなかったのです。今となれば、この経験を通して、「他者の心情を理解する。他者を思いやる。他者の心を守る。」ということを教えてもらいました。痛い経験でしたが、今の私にとっては必要で貴重な体験だったのです。
「どうして自分だけ、こんなに苦しい思いをしなければならないのか。」あまりにもつらく、苦しい出来事がおそいかかると、目の前の困難に心を奪われてしまいます。このような困難の最中に「このままでは、いけない。」と方向転換することがカギとなります。この苦しみを通して、神様が教えてくださることがあるのだと。今の苦しみは永遠に続くものではなく、いずれは終息し、この試練を通して、自分の成長につながる何かが必ずあります。それを得ることで人格が成長し、豊かな人生を送ることにつながる。そこに希望をもちたいと思うのです。
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