こころのサプリメント

「心が変わる瞬間」

チャプレン室 喜瀬 英之

 
ある療養者が、つらそうな表情で私に語りかけて来ました。
 
「家族が来てくれない」
「見捨てられたような気がする」
 
家族が来てくれるのを待って一日を過ごし、
来てくれなかった…と思いながら布団に入る時の絶望感を、
涙を流しながら語ってくださいました。
 
「もう生きていく希望がない」
 
そう言われたきり、だまってしまいました。
しばらく重い沈黙が続き、私が語りかけました。
 
「○○さん。実は、今までだまっていたのですが、
 ここには、タダで居られるわけではないんです。
 お金がかかっているのですよ。
そして、そのお金をかせぐために、家族が頑張って働いているんです。」
 
それを聞いた○○さんは、目を大きく開けてびっくりした表情で言われました。
 
「そうなの?! 知らなかった…。
 じゃあ、私は『来てくれない』なんて言っちゃいけないねぇ。
 私のために、家族は頑張ってくれているんだねぇ…。」
 
ちょっと嬉しそうな表情に変わったので、ひとつの提案をしました。
 
「○○さん。『家族が来てくれない』と思う時には、
 『家族は来れないくらい私のために頑張っているんだねぇ』と
 ことばを変えてみるといいですよ。
 そうしたら『見捨てられている』と惨めに思うことも無くなりますし、
 お布団に入る時も絶望感ではなく、家族のために祈る心になるでしょう。
 そして、今度、ご家族が来られた時には
『忙しいのに来てくれてありがとう!』という嬉しい気持ちから、
感謝のことばが出て来るはずですよ。」
 
何度も何度も頷かれた○○さんからの依頼で、
ご家族のために祝福をお祈りすると、ちから強く「アーメン」と言われ、
嬉し泣きされて、何度もお礼をされる様子に私の目頭もあつくなりました。