こころのサプリメント

「こころの拠り所」

チャプレン室 長濱 カンナ

 
A様が当北中城若松病院に入院されて、職員の優しさを大変気に入ってくださり「父、母、神、若松病院、世界一最高」と会うたびにおっしゃってくださいます。
そのような患者様の言葉は、私達の心を慰め、励まし、働きに対しての向上心を増させてくれる力となります。
 
A様は、必要な治療、リハビリを終えて退院され、当法人アガペ会の施設へと入所することになりました。
施設に入所されて1週間ほどが過ぎた頃、様子が気になり声をかけました。
しばらくは普通になにげない会話をしていましたが、急に「ちょっと時間ある?」とおっしゃいました。「時間ありますよ。」と言うと、A様は「自分は何か悪いことでもしたの?どうして私はここに来ているの?」「若松病院は良かった。父、母、神、若松病院、世界一最高」と何度もおっしゃって施設に入所していかにさびしいかということを切に訴えられたのです。
 
A様の性格は人見知りで、入院当初病棟ではA様に馴染んでいただけるようにといろいろ工夫をしていたとのことでした。時間の経過とともに生活に慣れて、職員とも馴染の関係を築くことができました。そのようなこともあり、相談員もA様のことを考慮し、当アガペ会施設への入所を手配してくれました。
しかし、A様にとっては、やっと慣れてきた頃に退院し、また新しい場所で生活を始めなければならないことになったのです。
 
年をとると新しい環境へ適応していくことが、どれだけのストレスであるか関係者の方はよくご存じだと思います。
また、A様は、せっかく関係を築くことができた職員との別れが、ご自身のこころの拠り所を失わせるという悲嘆を背負ってしまうことになったのです。
 
自分の本心を表に出すこともできないほど周りに気を遣っていたA様を私たちは見過ごしていました。
しかし、A様の心の叫びを聴くことができたことは神様の導きであったと感謝しました。
A様の心の思いに気づけなかったことをお詫びし、すぐに施設の職員に申し送りしました。施設の職員はA様に馴染んでもらえるよう対応の工夫をしました。また私は、以前A様が入院されていた病棟へ一緒に散歩して、関わっていた職員がすぐ近くにいることを確認していただいて、安心できるように対応しました。
病棟のスタッフは、快くA様を囲んで歓迎してくれました。
A様の不安な心は病棟職員の心温まる歓迎ぶりに平安を取戻しました。また、施設の職員の配慮にも自分は受容されているという安心感が持てたのでしょう。1週間もしないうちにA様は気遣いの笑顔ではなく、喜びと嬉しさに満ち溢れた笑顔を見せるようになり、今では施設の職員の手を握り、ご自身の頬にすり寄せるようになりました。
そして、「父、母、神、若松病院、世界一!私はここで一生を終えたい。」とおっしゃっています。
 
こころの拠り所は人間関係の中にあるということをしみじみ思いました。
聖書にこうあります。
「神の国は、人の目で認められるようにして来るものではありません。『そら、ここにある。』とか『あそこにある。』とか言えるようなものではありません。いいですか。神の国は、あなたがたのただ中にあるのです。」ルカ17:20、21
 
神の国とは、私たちが平安と真の喜びで満ち溢れていることのできる居場所です。その神の国は私たちの互いの関係の中に存在していると神様は教えておられます。
 
A様は、当院と施設で関わっている職員の皆さんとの関係の中にこころの拠り所を据えることができ、さらなる馴染の関係を構築中です。現在は安心して過ごしていただいているようです。
また、A様は神を最高とおっしゃっています。
真実に神様の助けを求めておられる方に、神様が応えてくださったことを心から感謝いたします。