こころのサプリメント

「夫婦の絆」

チャプレン室 伊是名 雅弥

 
高齢者の方々の中には、加齢による心身の機能の衰えが見られたり、これまで自分でできた身の周りの事ができなくなって、多くのサポートが必要になる場合があります。
 
また、その介助度の増加によって、医療と介護の必要性から住み慣れた家を離れ、家族のもとを離れて、病院や介護施設に移られる場合もあります。
住み慣れた家を離れ、家族のもとを離れるにあたっては、寂しさや無念さ、孤独感があります。
 
当法人の施設で療養されていたAさんは90歳をこえて、ご自分の病気による身体的な痛みもありましたが、別の施設に入所された奥様の事に思いを寄せて、次のような琉歌を詠んで下さいました。
 
会者定離(えしゃじょり)の習(なら)ひ 今(なま)ど思(う)み知(し)ゆる
二人(ふたぃ)ともに病(や)で 宿(やど)や違(たが)
 
Aさんはこれまでの人生の旅路を奥様と寄り添って歩まれ、喜怒哀楽を共にされてきました。
この琉歌にある「会者定離」とは、この世は無常で、会う者はいつか必ず離れる運命にあるとの意味ですが、Aさんはかねて習っていた「会者定離の」教えが、今、思い知らされるというのです。
二人(自分と奥様)が高齢になって病気を患い、これまで寄り添ってきた奥様と離れ離れになって過ごさざるを得なくなった「宿や違て」との言葉の中に、Aさんの寂しさや無念さが見られます。
 
しかし、その後、奥様が他の疾患を併発され、当院に転院されてきたことによって、お二人に再会の場が与えられました。
奥様の症状が良くなってきた時に、奥様の病室にAさんを案内しました。
Aさんは奥様と再会した時に「お母さん、お父さんだよ、分かる?」と言われて、奥様の手を固く握られたのです。
 
そのようなお二人の姿を見て、夫婦の絆の深さを感じました。
最初、緊張されていた奥様もご主人と一緒に「ふるさと」や「てぃんさぐの花」等の歌を
歌われるうちに和やかな表情になっていきました。
 
その後、奥様は治療を終えて、ご主人が入所されている当法人の同じ施設に移ることが出来ました。
奥様のお部屋を訪ねてお話をされるAさんの表情は寛ぎ、安心されていました。
 
「それゆえ男はその父母を離れ、妻と結び合い、二人は一体となるのである。」
(創世記2章24節)
 
聖書は夫婦の関係を重んじ、その絆の大切さを教えています。
夫婦の心がひとつになることによって、良い家庭が築かれ、良い社会が形成されていきます。
Aさん夫婦を見て、夫婦としての寄り添う心と愛、その絆の大切さを教えて頂きました。